ルトガルディスは トンヘレンで1182年に生まれた。幼少時代は、綺麗な洋服を好み、活発で魅力的な少女で、宗教的な要素は見られない生活を送った。彼女は12歳の時にシント=トロイデンの近くにあるベネディクト会の聖カタリナ修道院に預けられた。これは彼女を結婚させるための持参金として蓄えていた資産を、父親が事業の失敗で失ってしまったため、彼女の結婚が失敗に終わってしまったことが原因であるとされる[1]。ルドガルディスは、この時、オブラーテ(obrate)修道生活献身者として修道院に受け入れられた。ルトガルディスを修道院に送り込んだ彼女の母親はかなり不本意であった[2]。
ルドガルディスは、このような少女であったので、修道院に入っても数年間は修道生活に対して興味も持たずに過ごした。実際、彼女にとって修道院とは寄宿舎生活のようなものであった。彼女は喜んで、男女とも問わず友人たちを部屋に招いたり、自分から友人たちのところへ遊びに行ったりしたのであった[1]。
この時、ルドガルディスはとある騎士に夢中であった[2]。しかしある日、ルドガルディスにとって全てが変わった。彼女が友人宅を訪問している際に、彼女のもとにイエス・キリストが幻視として現れた[1]。イエス・キリストは、今にも血を噴き出しそうな脇腹を彼女に見せて、無意味な愛の触れあいを探し求めるのは止して、自分が何を愛するべきで、なぜ、それを愛すべきなのかを、よく熟考するようにすること、そして、絶対的に純粋な喜びがあることを彼女に伝えた[3]。
ルドガルディスは20歳の時、ベネディクト会の修道女となることを心に決めた。修道女たちの中には、ルドガルディスの心変わりはそんなに長くは続かないだろうと考える者たちもいた。彼女は次第に、より敬虔に修道生活を勤めるようになった。その後の十数年間に、彼女はイエス・キリスト、聖母マリア、その他の聖人を幻視(ヴィジョン)として観ることになった。