ストーリー
天野织人は高校の先辈である美名川贵臣に一目ぼれしてしまう。しかし织人は婚约者がいる身だった。何とか近づきたいと思う织人に、ある日チャンスがめぐってくるが、贵臣は织人が思っていたような人ではなくて…?
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昔、押し入れの奥から一枚の写真を见つけた。古びたセピア色のその写真には、优しそうな男性が写っていて、子供心にドキリとした覚えがある。
「この人はね、あなたのお父さんよ」
母さんは写真を见つめながら、淋しげに微笑んで教えてくれた。
柔らかな微笑を浮かべる、メガネをかけた优しげな青年。
写真は结局そのまま元どおりにしまわれてしまったが、その面影は决して消えることなく脳裏に焼きついた。そして何年もの年月が过ぎても、薄れることもなくずっとそのままそれはある。
多分、一生。
◇ ◆ ◇
「だーッ! 织人! ノート见せてくれっ!」
教室に入るなり、関がオレに泣きついてきた。あんまりの迫力に面食らって、オレはギョッと后ずさる。
「なんだ、おまえはっ」
「ノートォ~、ノート见せてくれ。数学の、问3!」
「ああ、そういやおまえ当たってたっけ」
オレは自分の席につくとやれやれと肩をすくめ、それでもカバンから数学のノートを出して関に渡してやった。 関とはつい一周间前の始业式、クラスで席が隣だったのがきっかけで仲良くなった友人である。人懐っこいと言うか远虑がないと言うか、今ではまるで昔からの友人のように感じるから不思议だ。
そしてそのたった一周间と言う间で、関がオレにノートをかりる回数数知れず。まだ入学して间もない高校一年生なんて、たいして难しい宿题が出るわけでもないのにこいつは毎回オレのノートを当てにする。もしかしてノートのためにオレと友达になったんじゃないかと疑うくらいだ。
そんなオレの想いが颜に出てしまったのだろうか関はムッとした颜をした。
「いいだろ、ノートくらい」
関はオレの隣の席に座ってノートを写しながら、ぶづぶつ文句を言った。
「まったく织人はいいよなー、颜ヨシ、头ヨシ、运动神経ヨシ、俺にもひとつくらい譲って欲しいぜ」
「何だそりゃ」
関の言叶に、オレは呆れて片眉を上げた。すると関は手に持ったシャーペンをオレに突き付ける。
「织人はなーんでも恵まれてんだから、ノートくらい见せてくれてもいいじゃねぇか」
オレはその言叶に、今度は息をついて肩をすくめた。
この台词は何も初めてじゃない。いつも周囲からよく言われている台词だ。だが、奴の言いたいことも何となく分かる。
オレは自分で言うのも何だが、デキる男だ。成绩だけでなく、スポーツにしても何にしても、何でも人并み以上なこなしてしまう。性格も明るい方で人见知りしたことはない。その上容姿にも自信がある。身长一七八センチ。キムタク系の二枚目颜に、女の子を虏にしてしまうという甘い微笑。センター分けの长めの前髪が、パラリと頬にかかるのが色っぽいと言われたことは一度や二度じゃない。
诘まるところ、オレは同级生にやっかまれる存在なのだ。自分でも自覚しているから、结构オレは男子生徒から嫌われるタイプかもしれない。
…そう考えると、関は今までオレの周囲にはいなかったタイプだ。
たいていはオレ同様そこそこモテる奴か、おこぼれにあずかろうとする奴で、こんなふうに何のこだわりもなさそうなのは初めてだった。
オレがそんなふうに関を観察していると、そういえばと関は颜を上げる。
「そうだ织人。さっき、绢川先辈が来てさ、话があるって言ってたぜ。多分菜穂さんのことじゃねぇの?」